今年の春に公開された映画「龍三と七人の子分たち」。

監督は世界の北野武。キャストは主演の藤竜也をはじめ近藤正臣、中尾彬、萬田久子ら錚々たる顔ぶれが集い、これまでの北野作品とは違った異色のコメディ作品として大ヒットした今作がいよいよBlu-ray&DVDとなって10月9日に発売!

藤竜也演じる主人公、元ヤクザの龍三がオレオレ詐欺にひっかかったことから、昔の仲間(七人の子分)とともに悪者を成敗するという、ある種シンプルな物語の中に随所に 盛り込まれた北野武ならではのブラックさ。シニカルかつニヒリズム的な側面がありながらも、とにかく大爆笑必至の今作について今回は藤竜也に直撃。映画の見所とともに、北野監督についてもたっぷりと話を聞いてみた。名優・藤竜也が見た映画人、北野武の魅力とは。

――北野作品に初めて参加してみて、監督の印象は撮影前と変わりました?

「それはなかったですね。そもそも北野さんの現場がどういう感じなのか想像できなかったし。でも、内心最初はこんな年寄りばかり集めて映画を撮って誰が観るんだろうっていう思いはあったかな(笑)」

 

――主要キャストの平均年齢は73歳ですからね。

「そんな映画なかなかないよね(笑)。監督はいろいろな作品を撮るわけで、今回もあくまでそんな北野映画の中の1つで、彼にとっては当たる、当たらないは関係ないんじゃないかな。だから、僕もある意味気楽にやろうって思ってたら、思いのほかパパっと撮って、パパパっとヒットしちゃって。それには驚きましたね。嬉しかったけど」

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――北野監督の撮影の早さは有名ですよね。

「早かったし、楽でしたね(笑)。あとは、今回夜間のシーンがあまりなくてよかった。しかも、1週間撮って次の1週間は休んでっていうスタイルだったから、現場はずっと元気よくて。僕らが休みの間も北野さんは忙しくやってたと思うけど、演じる側はトレーニングしたり、英気を養ったりして新しい1週間を迎えるとまた新鮮な感じがしてね。毎回初日を迎えるようなテンションでできたから、あのやり方はいいと思う。でも、お金がかかってしょうがないだろうけど(笑)」

 

――メイキングでは現場の様子も収められていましたが、そこからは緊張感も感じました。

「やっぱり、北野さんには独特なオーラがあったからね。特に最初は北野さんの新作をみんなでこれから作っていくってことで、異様なエネルギーや期待、熱っぽい感じが静かだけどあって。それは、初めて参加する僕もすごく感じましたね。みんなやってやろうっていう空気があった」

 

――とはいえ、今回の内容はこれまでの北野さんの映画とは全然違った感じでしたよね。ヤクザというキャラクターは同じでも中身は真逆。

「コメディだったしね。『アウトレイジ』とかも拝見してたけど、今回はそういった作品とは違って誰もが楽しめる、そんな作品でしたね」

 

――中尾彬さんの配役とかも驚きでしたし、藤さんも劇中で女装して逃げるシーンとかありますよね。あのときはどんな気持ちでした?

「どう演じようとかは考えてなくて、あのシチュエーションと同じでとにかく必死でしたね。若いヤツらが踏み込んできて、引っぱたかれちゃ嫌だし、ただただ逃げるだけ。しかも、ハイヒールを履いているから普通に歩けなかったし。面白くしようとか全然思ってなくて、ひたすら逃げることだけを考えてました。一度だけリハーサルをやったんだけど、監督が大爆笑してて“藤さんもういいです……”って。よっぽどおかしかったみたいだね(笑)」

 

――見てる方も爆笑ものでした。

「でも僕の方もさ、途中でオカマが出てくるんだけど、それがみんなデカくて。すごい迫力で最初は笑っちゃったよ(笑)」

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――劇中で気になったのは、今回は漫才的なやりとりも多くて、セリフ1つとっても大変そうでした。そのあたりはいかがでした?

「これは北野さんの一種の漫才というか、やっぱりセリフのタイミングとか、かぶせていく感じとか、そういうのは難しかったですね。僕らはあまりやったことないし。漫才的な畳みかけていく感じとか、盛り上がっていく感じは最初はわかってなかったけど、本読みのときに指示があってそれで理解していきましたね」

 

――現場でもそういった指示があったんですか?

「現場ではなかったですね。彼はいつも現場の隣の部屋の奥にいて、何かあればチーフ(ディレクター)が来て簡単に説明していくんですよ。もう少し元気よくとかシンプルな感じでとか。その意味をみんな考えながらやってましたね。でも、そこはみんな長いこと(俳優を)やっている人ばかりだから、要求されているシーンの空気もわかってて、それぞれ対応する感じで。とはいえ、たまに北野さんが入ってくるんですよ。“今の面白かったよ”とか言って、すぐにまた戻っていっちゃうんだけど(笑)。でも、それでどうすれば監督が喜ぶのかがわかってきて。それはそれで面白かったですね」

 

――藤さんにとって北野監督の魅力とは?

「どんな作品を撮っても、映画が好きな人間からすればこれが北野映画だなって感じるところがありますよね。そういった1つのスタイルを作ったことはスゴいと思う。昔なら黒澤映画とかあったけど、そういうことと同じだからね。型にはまることなく、いろいろな作品を作りながらもそこには必ず北野さんの色がある。それってスゴいことだよね」

 

――藤さんにとって、今作はどんな作品になりました?

「『アウトレイジ』や『アウトレイジ ビヨンド』では独特のニヒリズムがあって、それがこういった作品でも出ていて、なるほどなって思ったし、コメディを全然やってこなかった僕にとってはすごく新鮮だった。出演できて本当に嬉しかった。あとは何よりヒットしたことが嬉しかったですね」

 

――今後も北野作品に出たくなりました?

「そりゃそうさ。また呼んでもらえたら嬉しいね」

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――ちなみに、藤さんの中で好きな北野映画ってなんですか?

「やっぱり、『アウトレイジ』とかは好きですよ。好きというか、映画って虚構の世界に連れていってもらって監督の腕を楽しむもので、そういう意味ではあれは素晴らしい作品だと思います。あと、個人的には『あの夏、いちばん静かな海。』には感心しましたね。リリシズムや優しさ、そしてあの切なさが実に素晴らしい青春映画で。カメラワークも、ただ淡々と2人が歩いていく姿を動かさずに繰り返していく、その歩かせ方1つとってもうるうるしてくるんだよね。いつも思うんだけど、僕がいいなって思う映画は“ありがとう”っていう気持ちになる。出演してる俳優さん、監督、スタッフまでみんなに感謝したくなるんですよ。僕もそういう作品に出たいし、そう思われてみたい。そこが映画に関わるもののやりがいなんですよね」

 

――みなさんに聞いていることなんですが、藤さんが最近ワクワクしたことは?

「次の仕事にこれから入るんですよ。それに今ワクワクしてますね。やっぱり、いつになっても新しい現場が始まるときはワクワクしますね。同時にデザイン(身なり)もきちんとしないとなって。その準備をするのは楽しいですね」

 

PROFILE

藤竜也

1941年8月27日生まれ。1962年に映画『望郷の海』でデビュー。以降、1976年公開の大島渚監督の映画史に残る名作『愛のコリーダ』をはじめ、数多くの映画やドラマに出演し活躍。黒沢清監督の『アカルイミライ』など若手監督の作品にも意欲的に出演し、2004年には、『村の写真集』(三原光尋監督)で第8回上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞。また、陶芸好きが高じ、映画『KAMATAKI』やテレビドラマ『汚れた舌』で陶芸家の役で出演。さらには、神奈川・横浜そごうに於いて96年~98年の計3回、また横浜高島屋に於いても2006年に『藤竜也 陶芸展』を開催するなど、マルチな才能を発揮している。

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北野武監督最新作『龍三と七人の子分たち』DVD&Blu-ray

2015年10月9日発売

http://www.ryuzo7.jp/

出演:藤竜也 近藤正臣 中尾彬 品川徹 樋浦勉 伊藤幸純 吉澤健 小野寺昭 安田顕 矢島健一 下条アトム 勝村政信 萬田久子 ビートたけし

監督/脚本/編集:北野武

音楽:鈴木慶一

発売・販売元:バンダイビジュアル

©2015 『龍三と七人の子分たち』 製作委員会