原作は和久井健の人気マンガで、2007年にはテレビドラマ化もされた「新宿スワン」。

今年5月に公開となったその映画版は、奇才:園子温監督のもと、今をときめく綾野剛をはじめ山田孝之、沢尻エリカ、伊勢谷友介らが出演し見事に大ヒット。

そんな本作が、このたびDVD&Blu-ray化するにあたり園監督にインタビューを敢行。

本作のことはもちろん、美術家、作家、その他様々な分野でも活躍する彼なりのものづくり論、さらには最近訪れたロスでの出会いやそれにまつわる心境の変化まで、園監督の今を聞いた。

――今作「新宿スワン」は原作ありきで、しかもそれが大人気。そのあたりは制作において何か影響はありました?

「原作はもともとヤンマガ(ヤングマガジン)で連載してたわけですけど、実は僕、これまでヤンマガ(のマンガ)ばかり撮ってるんですよ。『ヒミズ』とか『みんな!エスパーだよ!』とか。だから、ヤンマガは毎週読んでたんです。その中でも、『新宿スワン』は特に面白いなって思ってて。だから、映画化するって知ったときには、誰が監督をやるんだろうと……」

 

――最初から「新宿スワン」の監督をやりたかったわけじゃない?

「自分からやりたいっていうのはなかったですね。マンガが面白いのと監督をしたいっていうのは、また話が別なので。しかも、こういうのは僕の仕事じゃないというか、来ないと思ってたんですよ(笑)。僕は大作とか今まで撮ったことないし。だから、まさか自分が監督をやるとはって感じでした」

 

――自分が面白いと思っていた作品を映画化するのって、どんな気分ですか?

「面白くないマンガの企画が来るよりはいい、ぐらいの感じですね」

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――今回の舞台は新宿、そこに何か思い出はありますか?

「新宿は、もともと東京に出てきたばかりのころよく遊んでました。それもあって、トップのシーンを撮影してたときに初めて思い出したことがあって。昔、あの辺でめっちゃたくさんの人間に囲まれてボコボコにされたことがあったんですよ」

 

――ある意味、トラウマの地?

「そんなことはないですよ。当時はしょっちゅうケンカ売られてたし、ただ撮影するまで忘れてましたけど(笑)」

 

――そういった思い出があることって、作品に影響します?

「あるっちゃあるけど……ないよりはあった方がいいのかもしれないですね」

 

――園監督的に今作の見所は?

「これは、純粋にただの娯楽映画なんですよ、誰が観ても楽しめるような。今回は僕自身それを目指してもいたし。だから、あんまり力を入れず、気軽に楽しんでほしいですね」

 

――原作はまだまだお話がありますし、続編もできそうですが。そうなったらまた監督したいですか?

「続編はあるんじゃないですかね、そのうち。監督は……期待してます(笑)」

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――これまでたくさんの作品を手掛けてきましたが、園監督にとって映画を撮るにあたってのポリシーは?

「それはその都度、作品によって変わりますね。例えば『新宿スワン』は、これまで奇抜な作品を作ってきたけどそうじゃないもの、誰もが楽しめる作品を撮る、それがポリシーだったし。だから、そういう意味では今回は自分の味とかは出してない。でも、逆に徹底してガウディみたいないびつなものを作るときには、そういう色を出しますし。毎回それは違いますね」

 

――園監督はファッションやアート、音楽などにも造詣が深いですよね。そのあたり、監督にとってはどんなものだと言えますか?

「今、僕が安心して、心が落ち着いていられるのも、アートがあるからなんですよ。今年は個展もできたし、来年もまたやるのが決まっていて。今はChim↑Pomとか、世界中の芸術家と一緒に作品を作ったりもしてますが、そういうのってすごくガス抜きになる。今はやめたけど前はバンドをやってたり、小説を書いたり、今年は絵本も作ったりしましたけど、そういうことがあった上での映画。本来は映画でストレスを抱えちゃいけないんだけど……来年ぐらいからはストレスのない映画作りを心掛けていきたいと思ってます」

 

――映画以外のものづくり、アートや音楽が心の拠り所なわけですね。

「アトリエでよく酒を飲むんですけど、そこではほとんど映画関係者とは飲まないんですよね。ミュージシャンとかアーティスト、そういった別のジャンルの人ばかりで」

 

――でも、それで新たな刺激を得ているわけですよね。

「ジャンルが違うとみんな生き様も違ってて、考え方も全然違うので新鮮なんですよ。映画関係者と飲むとどうしても同じベクトルの話になって、すごく生活臭がするので(笑)。それに、他の人と飲むと日本映画界の小ささもわかるし」

 

――ファッションも毎回独特で、オシャレですよね。

「実はこれ、昨日から変わったんですけどね(笑)。昨日までは普通にスーツでした。ジャケットが好きだったので、毎日ジャケット派だったんですけど、先日ロスに行ったら考えが変わって。ちなみにロスではアパートも借りたんですよ」

 

――それは拠点を移すということですか?

「そういうわけじゃなく、両方でやっていこうと思ってて。今回は、ロスで向こうの連中といろいろしゃべって日本に帰ってきたら、色がないなと思ったんです。それで、自分は色を付けようと思って、ホント昨日カラフルな服をめっちゃ買ってきました」

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――すごいタイミングだったわけですね。今後はカラフルなスタイルでいくわけですか?

「そうですね……そんな短いスパンで変わることはないかな。2、3カ月、年内中か、しばらくはこのアホっぽい感じでいこうかなと思ってます(笑)」

 

――ロスで大きな影響を受けてきたわけですね。

「向こうの若い映画人って、めちゃくちゃクレイジーな格好してるんですよ。しかも、それでいてイカしてる。あれを見ると、日本の映画人は全然ダサいなって思っちゃって。だから、僕も変わろうと思ったわけ。向こうの若いプロデューサーとか、普通にピンクのハートのサングラスとかかけてオシャレなんですよ。あとは、ヤツらが建てるビルとかもすごくカッコいい。洒落た看板作っておいて、それをわざと逆さまに付けてたり。ホントでたらめなんだけど、カッコいいんですよね。あんなの日本じゃ見たことないし、そういう考え方って日本人は度胸ないからできないだろうし、もうセンスが全然違うんだよね。でも、その姿勢は見習いたいなと思って」

 

――そういったことを日本でもやっていきたいと。

「日本でもそうだし、ロスでもね。いろいろやっていきたいなと。だから、映画も同じことばかりやっててもダメなわけですよ。そのあたりは、来年また新しいことをやっていきたいなと思ってます」

 

PROFILE

園子温

1961年12月18日生まれ。1987年に『男の花道』でPFFグランプリを受賞。PFFスカラシップ作品『自転車吐息』は、ベルリン国際映画祭正式招待のほか、30を超える映画祭で上映された。以後、衝撃作を続々と誕生させ、各国で多数の賞を受賞。映画以外にも大ヒットドラマ『時効警察』の脚本・演出なども手掛け、近年は『愛のむきだし』での第59回ベルリン国際映画祭フォーラム部門 カリガリ賞・国際批評家連盟賞を筆頭に、『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『ヒミズ』『希望の国』『地獄でなぜ悪い』が立て続けに海外で高い評価を受け、注目を集めている。2015年は『新宿スワン』のほか、『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』『映画 みんな!エスパーだよ!』『ひそひそ星』の監督を手掛けた。

ジャケ

映画『新宿スワン』DVD&Blu-ray

2015年11月3日発売

発売元:講談社/ハピネット 販売元:ハピネット

http://shinjuku-swan.jp

 

出演:綾野剛 山田孝之 沢尻エリカ
金子ノブアキ 深水元基 村上淳 久保田悠来 真野恵里菜 丸高愛実 安田顕/山田優 豊原功補 吉田鋼太郎
伊勢谷友介

監督:園子温

脚本:鈴木おさむ 水島力也

音楽:大坪直樹

原作:和久井健『新宿スワン』(講談社「ヤングマガジン」刊)

©2015「新宿スワン」製作委員会